作業療法士に求められる能力

理学療法士同様、作業療法士の職務内容もまだ一般に十分認知されているとは言い難く、
両者の区別があいまいな方も少なくありません。

だが、障害を抱えた人に対してリハビリテーションを施す点では同じであるとはいえ、理学療法士が機能回復の手段として物理的手段(マッサージ、体操など)を用いるのに対して作業療法士は応用的動作や社会適応能力の回復を図るための作業を行う点で異なります。

つまり、前者が歩行や起居といった基本的な身体動作を助けるのに対し、
後者は筆記や工作といった細かい手作業や、衣服の着脱などの応用的動作を患者ができるようにします。

また、こうした作業を行うには運動機能はもちろん安定した精神を保つことが必要であり、作業療法士が精神障害の領域とかかわりが深いと言われるのはそのためです。

 

作業療法士には何が求められているか

 

では、応用的運動の能力や社会適応性を回復するうえで、
作業療法士には何が求められているのでしょうか。

実際に活動中の作業療法士の方を例に取り上げながら、
その条件について考えてみたく思います。

とある病院の一角から、こんな会話が聞こえてきます。

「こんにちは。何か困っていることはありますか。」

「はい。脳梗塞になって、助かったのはよいのだけれど箸が持てなくなって……。」

「では、まずはボールをもつことから始めましょう。」

患者の相手を務めるのは、病院所属の作業療法士Bさん。

やおらポケットからお手玉を取り出し、患者に持たせます。

それを使って指の運動をしてもらおうというのだが、
その際にも具体的なアドヴァイスは欠かしません。

患者の相手を務めるのは、病院所属の作業療法士Bさん。

やおらポケットからお手玉を取り出し、患者に持たせます。

それを使って指の運動をしてもらおうというのだが、その際にも具体的なアドヴァイスは欠かしません。

「手の中で転がしてみてください。人差し指と中指がこんな風に動けば箸も握れますよ」

病室に戻ってからもお手玉を握ってみてください」といったように。

病室を出れば、次の患者がお待ちです。

こちらの方は数年前に脳卒中を発症、一命は取り留めたものの認知能力が低下しており、ジグソーパズルを行っても形を間違えて認識し、本来はいるべきでない場所に、ピースを押し込んでしまうこともあります。

でも、Bさんはあせらずゆっくりパズルを続けさせ、
達成できたことについては褒めることも忘れません。

「この前は半分くらいしかピースが埋まらなかったけれど、今日はほとんど完成まで行きましたね。でも、こことここが場所が違うみたいだから、他の場所にはめてみましょう。」」

「特に、急性期の患者さんは意識が混濁していることが多いんです」と、Bさんは語ります。

「手術前には何の問題もなくできたことができなくなってしまって、こんな簡単な作業もできなくなってしまったのか、と気落ちされる方も少なくありません。でも、だからこそ訓練が必要なんだ、倒れる前にできたことを、もう一度行えるようになりたい、と思ってもらうことが大切なんです。」

希望を持てるようにフォローを欠かさないのはそのためです。

既に作業療法士としての経験を何年か積んでいるBさんには、患者の様子や症状から、

「一カ月後にはここまでできるようになる見込みがあるから、今からこの作業をしてもらおう」

と、将来の予測を立て、目標に向けたプランを立てることができます。

回復への道筋をなるべく明確にし、

回復を期したプランを立案するのも作業療法士の重要な任務の一つなのです。

 

共感力とコミュニケーション能力が不可欠

 

こうしてBさんの活躍を見ていくと、作業療法士に必要なものがおのずと理解されてくるのではないでしょうか。

まず、理学療法士同様、患者とは文字通り間近で接し、直接対話する仕事なので、コミュニケーション能力は必要不可欠です。

特に、作業療法士は日常生活に必要な運動機能の回復を主たる任務とするものの、心身に障害を抱えた方は、これらの作業ができない、あるいはできなくなったと知って、ナーバスになっていることも多々あります。

そんなとき、不安と混乱のただなかにいる相手を励まし、回復に向けて努力しようという意欲的な気持ちを取り戻させるには、患者との信頼関係を築くことが必須です。

さらに、プラス思考で患者を支えることも大切です。

患者によってはほとんど健常者と変わらないような機能を取り戻すケースもあるのですが、 実際にはそれが難しく、どうしても行動領域が限られてしまう方が大半です。

とはいえ、その現実を突きつけて「あなたにはこれしかできない」と宣告してはいけません。

むしろ、「あなたにはこんなことができる可能性がある。そのためには、こうした努力が必要です」などと、できることを教え、その実現のためには何をしたらよいかのロードマップを示すことが期待されているのです。

そのためには、相手の気持ちを読み取り、その立場に立つ、共感という行為が不可欠なのは言を俟たないでしょう。

作業療法士に無くてはならない今一つの要素としては、自己研さんの心構えがあります。

工作や編み物、陶芸、織物など患者によって必要とされる作業はまちまちであり、作業療法士はこうした手作業を、率先して行う必要があります。

もちろん得手不得手はあるので、こうした手作業すべてに熟達していなくても用は足りますが、少なくともそのやり方を知り、同じ作業でも、障害を抱えた人にとってはどうしたらやりやすいのか、うまくできるようにするにはどうしたらよいのかを工夫し、案出しなくてはなりません。

そして、そのためには自分のやり方や方針に拘泥することなく、絶えず自己変革し、時に教えを乞うなどしながら自分を磨いていく努力が求められるのです。

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